コンビニでは買えない栄養素(小さな恋の物語)
祖母と母が自分を押し付けあったことと、その晩泣き明かしたこと以外は全部……。
新学期が始まり、美由が登校すると友達が群がって来た。
「ねえねえ、知ってる? 美由がいつも行くコンビニあるじゃない? あそこで『小さな恋の物語』に出てる人がバイトしてるんだって? 美由なら見たことあるでしょ? もう話とかした?」
「え?……そうなの?」
咄嗟にしらばっくれてしまった……最初は話題にして自慢しようと思っていたし、思惑通り顔を見せれば話しかけられる位まで親しくなっていたのだが……。
「え~っ? 知らないの?」
「バイトのお兄さんの顔まで一々憶えてないもん」
「でも『小さな恋の物語』は見てるんでしょう?」
「最近つまんなくなって見なくなった……」
「そうなの?……美由なら親しくなってるんじゃないかと思ったんだけどなぁ……」
「ごめん……」
最初は学校での話題づくりのために近付いた……しかし、いつのまにか美由の中で明男は大事な人になっていたのだ……美由は初めてそれに気がついた。
明男にとっても美由は、当初の良くない印象はすっかりなくなっていた。
しかし、可哀想な子だな、とは思っても特別に好意は持っていない。
いくら露出度の高い服を着ていてもロリータ趣味のない明男にはなんの意味もなさないし、少し崩れた雰囲気は今でも好きではない。
そもそも二十一歳の明男と十一歳の美由だ、歳が離れすぎていて恋愛対象としては見られない、ドラマと現実は違うものだ。
作品名:コンビニでは買えない栄養素(小さな恋の物語) 作家名:ST