孤独たちの水底 探偵奇談12
「…それって告白してくれてるの?」
「そのつもりだけど?」
「あ、あたしは」
「別にすぐにじゃなくていいよ、郁ちゃんがいつか瑞くんに愛想つかしたらで。それまでは俺も他の子と恋愛すると思うし」
なにそれ、と郁は口を尖らせる。不誠実じゃん、と。
「郁ちゃんが俺を好きになってくれたら、付き合ってる子とは速攻別れるけど」
「それじゃあ相手の子がかわいそうだよ!もう、颯馬くんやっぱりだめだよ、もっと女の子大事にしなきゃ!」
「してるってば、優先順位の一番上が、いまは郁ちゃんってこと」
もういいよ、と照れているのか郁はそっぽを向いてしまった。
「そんなこと言ってる場合じゃないじゃん!」
「そうでしたね…」
怒らせちゃった?怒った顔もかわいく思えてくるから不思議だ。
(なんか…困らせたいな、もっと。いろんな顔見たい。こんな気持ちはわりと新鮮)
意地悪なことを考えてしまう颯馬だった。
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作品名:孤独たちの水底 探偵奇談12 作家名:ひなた眞白