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海のねこまんま

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黒い大きな相手は、ぼこぼこと出っ張った塊の積み上がったところまで連れてきました。
ひとつの塊まで来ると、わたしに待ってろ!と告げると何処かへ行ってしまいました。
赤いお日様が大きな水溜まりに浸かりました。水溜まりが赤く染まっていくようでした。

『ほら、食ってみろ』
その声に振り返ると、黒い大きな相手が銜えてきたのでしょう、わたしの前に置いてあるもの…… それは以前 彼の部屋の四角い画の中で見たモノと同じでした。
『食い方も知らないのか? おまえ、猫か?』
『そうよ。食べることくらいできるわ!』
わたしは、恐る恐る舌を出し、舐めてみました。臭いにおいが鼻を襲いましたが、少しだけ彼に貰った食べ物に似たにおいもしました。
『け! 舐めるのか…… おまえの牙を突き立てるんだよ。こうやってな』
そういうと 黒い大きな相手はそのモノを齧りむしりました。
『コレ食ってみろ』
引きちぎったモノをわたしの前に置きました。
わたしは、齧りました。初めて食べた味でした。
『旨い……』
『だろ? おまえなんてカリカリしたモノばっかり食ってるんだろうな』
『コレ なに?』
『なに? なにって? おまえ なにっていったのかぁ?』
黒い大きな相手は、大きく顎を開けて馬鹿にした顔でわたしを見ました。

「こら、バンチョウ。小さな猫ちゃんいじめていかんぞ」
彼と同じ言葉を話す者が 黒い大きな相手に言いました。
『バンチョウ。それがあなたの名前?』
『人間が 勝手に呼んでるだけだ。それより旨いだろ? これが本物の魚だ』
『さかな?』
『この海には これがたくさんいて、さっきのオヤジたちが競りのあまりに食わしてくれる。俺たちの食いもん。おチビにはこう言わなきゃわかんねぇか。《海のまんま》だ』
そう話す黒い大きな相手の目には、赤いお日様が映り込んでいました。
赤い目。
なのに 怖さよりも穏やかな雰囲気がありました。そう、さっき見た背中もそうでした。
『さあ、食ったら帰れ!』
突っ立ったままのわたしを 黒い大きな相手は鼻先で押しました。
『あ……』
わたしは、不思議な感覚に後ずさりしました。
しかし わたしは確かめたくて黒い大きな相手の腹に鼻を近づけました。
『なにしてんだ? 早く帰れ!って』
『だって! だって……』
わたしは、その続きの言葉を飲み込みました。でも、このままでは、抜け出してきたことが無駄に終わってしまうと思いました。

作品名:海のねこまんま 作家名:甜茶