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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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郁たちと作ったカレーを盆にのせ、伊吹は瑞を探す。広い庭の見える縁側に、彼はむっつりと座っていた。伊吹の気配に気づいているくせに、知らんぷりを決め込んでじっと庭を見ている。まだ怒ってる。というより、あれだけ激しく感情を爆発させて伊吹をなじったことを後悔しているのだと伊吹にはわかる。それでばつが悪いのだ。ここは先輩の俺が折れてやるか。

「もう機嫌直せって」
「……」
「俺が悪かったから」
「……」
「カレー喰うか」
「……………喰います」

不機嫌そうに皿を受け取り、もくもくとカレーを頬張る瑞の隣に腰掛ける。

「…悪かったよ」
「……」
「だから…泣くなよ」

カレーを頬張りながら、瑞はぼろぼろと涙を零しているのだった。しゃくりあげながら、言葉を紡ぐことが恐ろしいかのようにカレーを口に運びながら。子どもみたいに。軽く衝撃だった。それほどまでに傷ついていたのか…。

「ごめん…」

怖かったのか。俺が死んでしまうと思ったのか。

――以前もおまえは、俺をこんなふうに失ったことがあったのか。

伊吹が自分の命を差し出すに等しい行動に走ったのは、女と同調したことが大きいのだろうが、それ以上に思ったのは、自分にしかできないという責任感からだ。決して自分をないがしろにしたわけではないのだが、無謀だと責められるのもまた、当然のことと伊吹は理解できる。そしてここまで深く瑞を傷つけていた事実に、伊吹自身もまた傷つく。

「……」

嗚咽がとまるまで、伊吹はただ悔いながら隣に座っていた。秋風が沈黙とすすり泣きの隙間を通り抜けていく。やがて落ち着いた瑞が皿を置いて、ようやく口を開いた。

「…すみませんでした」

消え入りそうな声で言い、ばつが悪そうに両手で口を塞いでいる。恥ずかしいのだろう。