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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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志帆は潤子、須美子を伴い、分家へ今後のことについて話をしに出かけていった。郁は颯馬とともに借りていた部屋の掃除をしたり、荷物の整理をしているところだった。

「無事に帰れるね」

郁はほっとしていた。昨夜隠れた押入れの中で、本当に生きた心地がしなかったのだ。震える志帆とともに、祈ることしかできなかった。

「無理言ってついてきてもらってごめんね。でも郁ちゃんがいてくれてよかった、志帆ちゃんが少しでも安心できるようにって思ってたんだけど、あの子をたくさん笑わせてくれてありがとうね」

颯馬が改まってそんなことを言うから、郁はなんだか気恥ずかしくなる。

「役に立てたならよかった。志帆ちゃんとも友だちになれたし」

また、事件抜きに会う機会があるだろう。自分の存在が少しでも、誰かの支えになれるなら。そんなことはおこがましいのかもしれないけれど、郁は誰かにとってそういう存在になりたい。瑞たちのような力がなくても、ないからこそ、自分にできることを精一杯頑張りたいと、強く思う。

「心配なのは、あの二人の方だよねえ。ほら」

颯馬が息をついてそう言ったとき、客間から瑞の大きな声が聞こえてきた。それは殆ど怒鳴り声であった。

「何考えてんの!?死ぬかもしれなかった!!」

あれは大丈夫じゃないケンカ。そう言って颯馬が客間に向かうので、郁もはらはらしながらその背中を追いかけた。

「…ああするしかなかった。あのひとの思いが、俺にも伝わってきたんだ」

客間では、瑞と伊吹が対峙していた。冷静さを欠いた様子で伊吹を責めている瑞と、それをただ真正面から静かに受け止めている伊吹の姿。