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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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「ころしてやる!!!!」

尚も反吐をはきながら絶叫する女に突き飛ばされた。なんという力だ。老女とは思えぬその身体の力に、伊吹は床に打ち付けた背中に痛みを感じながら起き上がる。

「ちょっとごめんなさい、荒療治だけど」

颯馬が思わぬ行動に出た。ぐいと潤子の腕をひっぱると、振り上げた腕で思い切りその頬を張ったのだ。乾いた鋭い音がして、潤子がよろけた。

「あなた志帆さんを恨んでなんかいない、そうですね?」

暗がりの中をよくとおる、颯馬の鞭のような声に、ぼんやりとした潤子の目に、少しずつ光が戻ってくるのがわかった。

「しっかり自分の気持ちを持って。あなたは志帆さんのことも真司郎さんのことも憎んじゃいない。大切な、家族同然の存在として愛している。そうですね?」

潤子の目に、みるみる涙がたまる。彼女は幾度も幾度も頷く。鬼が人間に戻っていく。

「恨んでなんて、いない…わたしにとって志帆さんたちは、我が子も同然です!傷つけたりなんかしない!」

よし、と颯馬は潤子の背中を叩いた。

「憑依が解けた。まあ一時的にだけど」

潤子はおいおい泣きながらも、嗚咽の狭間に強い思いを口にした。

「わたしは古多賀の家のひとを恨んでなどいない!わたしの中から出て行って!!」

潤子が吼えた、その瞬間。

「!」

時計の音が、再び屋敷中に響いた。狂ったような鐘の音に合わせ、音をたてて部屋中の空気が凍り付いていくような感覚。

「本体だ」