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夕食を取りながら、帰ってきた志帆の話を聴く。彼女は一日かけて親戚筋をあたり、歴代当主の死の様子や怪奇な現象の有無について聞き込みをしていたのだという。

「大変だったね。疲れたでしょ？」

郁は彼女をねぎらう。ここまでするのだ。やはり兄を救いたい気持ちは大きい。志帆は力なく笑った。

「大叔母様に、何を嗅ぎまわっているのだと叱責されました。目をつむっているとはいえ、人死にの出ていることに、安易に首を突っ込むことはやはり気持ちがいいものではないのだと思います」

疲れ切っており、あまり食欲もないようだ。早めに箸をおいた彼女が、食器を洗おうとするのを颯馬が止めた。

「俺らがやっとくから休んでなよ」
「…うん、ありがとう」

彼女の思いに応えたいと郁は思う。こんなに一生懸命なのに。絶対にお兄さんを失わせるような、そんな思いをさせたくなかった。細い腕を抱き、静かに項垂れる志帆。

「平気？寒い？」
「大丈夫。ちょっと冷えただけ」
「ずっと聞き込みに言ってたもんね。お風呂いこ。あたし沸かしてくる！」

郁は風呂場へと向かった。外はとっぷりと暮れなずみ、町の明かりは遠い。居間からもれる光だけが頼りの薄暗い廊下を速足でかける郁。

「ん？」

自分たちが借りている部屋の襖が、ほんのわずかに開いていた。昨日、足音の主が入ってきたという伊吹らの寝室だ。