そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編
「何世代も前から、生身の人間にこの呪いを繰り返し代行させているんだ。それがあの女。潤子さんは憑依されている。無意識に、呪いを行っている」
あの優しいひとが…。郁はにわかに信じられない。家族の様に慕う志帆も同様だろう。言葉も出ないようだった。
「じゃあ…これまでの、長男殺しも…?」
「潤子さんの一族は、代々古多賀に仕えていると言っていたじゃないか。代々呪いを代行していたのが、潤子さんの一族だった可能性がある」
そんな、と志帆は力なくへたりこんだ。
「早くやめさせないと!」
志帆の肩を抱いて、郁は瑞に言った。こんなこと、一刻も早くやめさせなくては。
「ヒトガタは燃やして、灰を川に流せば力を失うよ。でも潤子さんは憑かれている限り、ずっと同じことを繰り返すね」
颯馬が言う。
「しかも本人に呪いを行っている意識がないのだとすれば、やめさせることは難しいよ。どうするの、瑞くん」
瑞は腕を組んで、考え込んだ。
「…とにかく、潤子さんが戻ってくるのを待とう。話してみるしかない」
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作品名:そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編 作家名:ひなた眞白