そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編
「ええ…わたしが話したのは……潤子さんだけです」
郁らがここにいることを知るのは、潤子と志帆だけだ。
「颯馬さんと、その先輩が来る、とだけ伝えました。お名前と一緒に…」
一つのヒトガタには伊吹の名が、もう一つのヒトガタには真司郎の名が書かれていた。そしてその隣に、バラバラに砕けたヒトガタの破片が落ちている。瑞がパズルをするように組み合わせたところ、どうやら「あまたにそうま」と読める。
「おい、おまえのもあるぞ颯馬」
「ほんとだー。でもまあ、俺の守護が強すぎて砕けちゃったんだろうね!アハハッ」
恐るべし、沓薙四柱の加護!ヒトガタの呪いを跳ね返したということか。
「赤木潤子さんだ。あのひとしか、これを作れない」
伊吹が言い放つ。
「呪いの元凶を探るために調査に来る、俺と颯馬の名前をあらかじめ伝えてたのは間違いない?」
「は、はい…」
「だから俺のところにも、あの女がやってきたんだ。邪魔者だから。長男を殺す邪魔をすると思ったから」
この一族を呪っているのは、赤木潤子…?
「そんな!潤子さんがこんなこと!」
「彼女しかいない。しかしこれは彼女の意思ではない」
瑞は言い放つ。
作品名:そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編 作家名:ひなた眞白