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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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「これはヒトガタです。丑の刻参りにも使うね」

颯馬が答えた。

「ヒト…ガタ…?」

郁は改めてそれを見る。手のひらのサイズの薄っぺらい木片だ。頭、手足を象ってあり、木目の模様が目鼻に見えた。おぞましい人形。できそこないの、人形だ。なによりも恐ろしいのは、そのヒトガタの表面に書かれている文字――

「丑の刻参りって…藁人形を憎い相手に見立てて釘を打つんでしょ?でもこれ、藁人形じゃないよ?」

震える声で郁は尋ねた。丑の刻参りというのは、その名の通り丑の刻、憎い相手に見立てた藁人形に釘を打ち、ひとを呪う呪術だったように思う。テレビで見たことがあった。

「藁人形もヒトガタも、誰かに見立てるという点では同じ役割を果たすんだよ。薄く切った木片の節のある部分を目や鼻に見立てて、人間の形に切り取る。そしてこうして名前を書く。そうすると…この人形と名前を書かれた人間は感覚も魂も限りなく近くなる。ヒトガタを傷つければ、そこに書かれた名前の人間も、同じ個所を痛めてしまうくらいに」

そう。
その二体のヒトガタには、墨汁ではっきりと名前が書かれていたのだ。荒く、まるで憎しみを体現したかのような恐ろしい字体で。

こたがしんじろう

こうずえいぶき

誰かが、この二人を呪い殺すために作ったのだ…。

「…俺らが調査に来ることは、一族のひとは知らないのですよね?」

瑞が固い声で志帆に尋ねた。両手で口を覆って硬直していた志帆は、そのポーズのまま細い声で答えた。