小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

INDEX|29ページ/51ページ|

次のページ前のページ
 


不気味だった、ずっと。
瑞がそう呟いて柱時計を見上げる。時計のもつおぞましい記憶を、瑞は感じ取っていたのだろうか。沈黙する時計のゼンマイを、志帆はもう巻こうとしなかった。

「…なあ、ちょっと」

立ち上がった伊吹が、柱時計に近づく。どうしたのだろう。

「開けていいかな?」

志帆に断ってから、伊吹が柱時計のガラス扉を開ける。

「この時計…女が死んだ時間で止まるんじゃないか?いつも。毎晩。午前二時を過ぎて」

扉を開けた彼は、顔を突っ込み、時計の内部を見渡す。童話の中で、子ヤギがオオカミから隠れた大きな箱。伊吹は何かを探す様に上半身を突っ込んでいる。

「先輩、なにか探してるんですか?」

颯馬の声を背中に受け、伊吹は内部に視線を走らせながら答える。

「あの女、毎晩ここから這い出てくるんだ」
「え…?」
「これが、怨嗟と恨みの箱になってるんだと思う。だからきっとここに、なにか…あるんじゃないかって…」

伊吹は何かを見つけたようだ。腕を伸ばし、何かを探っている。そして手にしたそれを、座卓の上に置いた。

「時計の奥にガムテープで張り付けてあった。颯馬なら、これが何かわかるか?」

座卓に置かれたその小さなもの。郁にはそれが何かわからない。それでも、ひどく禍々しく、決して触りたくない恐ろしいものに思える。