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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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「ねーおなかすいたよ。とりあえずごはんにしない?」

颯馬が緊張感のない声を出し、張りつめていた空気がゆっくりとほどけた。

「そうですね。潤子さんが今朝は用事ででかけていますから、わたしが何か用意しますね」

そういえばお腹が減っている。朝ごはんを食べて、少し元気を出さなくては。郁は柱時計を見た。いま何時だろう。そこで気づく。

「…また止まってるよ?」

時計は、止まっていた。振り子も静止している。

「あ、本当。昨日合わせたばかりなのに」

ゼンマイをまこうとした彼女を、瑞が呼び止めた。

「待って」
「はい?」
「昨日と同じ時間で止まってるぞ」
「へ?」

柱時計は、二時を少し過ぎたところで止まっていた。郁は覚えていないが、瑞は昨日も同じ時間で止まっていた、と主張する。

「おい…」

同じく伊吹が立ち上がり、青ざめた顔で言う。

「あの夢の中で、時計を鐘を聞いた。二回。女が息絶えるそのときに」
「俺も聞いた。志帆さん」
「は、はい…」
「この時計、ずいぶん古いけど、いつ頃からあるの?」

尋ねられた志帆は、困惑したように頬に手をあてた。

「ええと…以前わたしたちが住んでいた本家には、わたしが生まれたころにはもうありました。たぶん、もっと昔からあるんじゃないかな」

女が死んだ夜、この時計がそばにあったんじゃないのか。瑞がそう推察する。本家がここではない場所にあったときから、時計だけは古多賀の歴史を見つめ続けてきたのだと。

「この時計は、すべてを見ていた…?」
「多分」