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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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恨みなす呪物



夜が明けて、全員が客間に集まっていた。あれから深く眠っていた伊吹だが、目を覚ましたころには痛みを訴えることも、憑依されている様子もなかった。伊吹が昨夜みたもの、同調した女から流れてきた光景を、静かに語りだす。郁らは、それを神妙な面持ちで聞いていた。意識を失った直後に伊吹に触れた瑞も、同じ光景を見たのだという。信じられない話ではあるが、二人の語った光景は全く同じものだったのだ。

「古多賀家の者に殺された女がいる」

伊吹の声に、びくりと肩を震わせたのは志帆だ。郁はその複雑そうな表情を見て気の毒に思う。

「おなかに子どもがいて…たぶん古多賀の長男の子どもなんだけど、その子もろとも殺された」

背中を切られて…。郁はあまりにひどい光景を想像し、肩をすくめた。

「なんで殺されたのさ?家族間で諍いでもあったの?」

颯馬も、いまばかりは神妙な声だ。

「家の外の女だったのじゃないかな」

瑞が言う。

「昨日赤木潤子さんに聞いた。この家は、家の外から女を入れることをとても嫌がるって。必ず遠縁でも一族の血を引くものを娶せるって。だから殺されたあの人は、古多賀家の者ではなかったのじゃないかな…」

その女性が当主と関係を持ち、子を成した…。それを咎められて殺されたというのか?そんなひどい話、同じ女性として、郁は苦しくなる。なんという悲劇だろうか。

「女は、子を奪われる苦しみを、この家に思い知らせてやると、そう呪いながら死んだ。長男の命を奪うんだ」

一族の大きなスキャンダルについて、志帆は知らなかったようだ。当然だろう。これが、一族が隠し続けてきた負の歴史なのだろう。