そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編
「須丸くんっ!!」
呼び声に、瑞は我に返る。郁が心配そうに自分の肩をゆすっているところだった。
「あれっ…」
「大丈夫?ずっと声かけても反応しなかったんだよ?」
気を失っている伊吹の右手を握ったまま、瑞は茫然と座り込んでいた。
「夢か…?」
夢を見ていたのだろうか。追われて、切られて死んだ、女の夢。鼻の奥に、まだ煤けたような匂いが残っている。あまりにリアルで、こと切れる寸前の女の恐ろしい顔が頭から離れない。寒くてたまらない。いまのはなんだろう?
「夢って…何を見たの…?」
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作品名:そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編 作家名:ひなた眞白