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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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郁はそのぶるぶる震える肩に手をやった。耳を裂く慟哭。泣き叫ぶ声は、もう伊吹のものではない。涙を流して吠えるその壮絶な姿にのまれ、瑞までもが立ち尽くしている。

「…あなたは誰なの」

志帆だ。叫ぶ伊吹のそばに近づくと、震える声で零した。

「どうして命を奪っていくの!ねえ!」

志帆は本能的にわかっているのだ。いま伊吹に憑いている者こそが、古多賀に祟る元凶なのだと。

「答えて!どうして、どうしてお兄ちゃんが死ななくちゃいけないの!どうしてよ!」

恐怖を超越し、大切な家族への思いがあふれだしているのだろう。志帆は涙を流しながら伊吹を、その内側に潜むものを責めたてる。聞いたこともないほど大きな声で。

身体中の悲鳴をすべて吐き出し切ったかのように、伊吹は背中を抑えぜえぜえと息を弾ませたまま、布団に顔をうずめている。いまにもこと切れそうなその様子。本当に死んでしまうのではないかと、郁は震えが止まらなくなった。


「…きら…れた、」


しゃがれた声が、荒い呼吸の隙間に響く。


「うしろ、から…きられた…」


あの女が、伊吹の口を借りて話しているのか?