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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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「俺を見つけた。まっすぐに来る」

伊吹がそう口走った瞬間、電気が落ちる。闇が視界を塗りつぶす。目を覚ました志帆が、郁にしがみついた。

「郁ちゃん…!」

辺りは一瞬で闇に包まれた。急激に、部屋の温度が下がっていくのがわかる。ついに来たのだ。

(どうしたらいいんだろう…逃げるにしても、こんな暗闇の中じゃ)

襖の向こうの気配に、瑞がじっと集中しているのがわかる。

「颯馬、玉砂利持ってるか?」
「うん。水もお札もあるよー」
「やばいと思ったら投げろよ」
「わかった」

ギィー、ギィー…その足取りは、ものすごく緩慢だった。しかし、明確に目的をもって踏みしめていることが伝わってくる。地獄から響くようなその音は、錯覚だろうが部屋全体をふるわせているかのようだ。
緊張と恐怖で、口の中が乾いていくのがわかる。確実に近づいてくる足音を前に、郁らは逃げ出すこともできずに待つ。

そして、足音は郁らの部屋の前で止まったのだ。襖の向こうに、それはいる。


「――目が合った。入ってくるぞ」


かすれた伊吹の声に、志帆が短く悲鳴を上げた。瑞と颯馬が同時に立ち上がる。

「…血の匂いがする…」

伊吹がそう言って、突然布団の上に上体を倒した。苦しそうな息づかいに、全員が彼のそばを取り囲む。