小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

INDEX|14ページ/51ページ|

次のページ前のページ
 


沓薙山にある、心をうつすという洞窟の泉の話を思い出す。あそこに入れば、すべてわかるのだろうか。打ち解けるにつれ募る、この罪悪感の正体も、目の前に現れるもう一人の瑞のことも。

「伊吹にこれを」

瑞が、右腕をこちらに伸ばす。

「…?」

差し出された瑞の手のひらに、黒ずんだように茶色い櫛がのっている。小さな飾り櫛だ。柄のない、半月のカタチをした櫛…。昔の女性が、結い上げた髪に指していたようなあれだ。櫛というより、かんざしに近いものかもしれない。
月明かりに見にくいが、相当古いものだとわかる。何か絵が描かれているようだが、かすれて判別できない。

「これは…?」

受け取り、眺める。なんだか、懐かしいような、どこかで見たことがあるような気がするのだけれど。男性の瑞が使用するとは思えないのだが…・

「おまえを守ってくれる。俺の大事なものだけど、伊吹が持ってて」

守ってくれる。そう聞くと不思議だ。じんわりと、温かいような気がするのだ。

「あの、」

櫛から目を離し、顔を上げた。そこにもう、瑞の姿はなかった。

「…は?」

月は雲に隠れ、再び闇があたりを覆う。伊吹は裸足のまま庭に降りる。しかしどこにも、彼の姿も気配もない。消えた…。夢だったのか?いや、櫛は手にある…。