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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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「瑞くん、怒ってないでなんか言ってよ」
「先輩を囮にして、その女と話をしろってことだろ?」

冗談じゃない。瑞は声を尖らせる。普段はとても穏やかで、いまだって声をあらげているわけでもないのに、静かなる怒りをたたえている彼は結構怖い。

「代々の長男をとり殺してきた悪霊かもしれない。先輩は、自分がものすごく危険な立場にあることを理解していますか?」

瑞は、伊吹を危険に晒すことに反対しているのだ。そのためだろう、言葉に棘がある。それを感じたのか、伊吹は表情を曇らせた。

「わかってるけど、でも」
「でも、なんですか?」

あらら、険悪な雰囲気になってきた。郁ちゃんたち早く戻ってこないかなあ。

「わかってるけど、もうそれしかないだろ。おまえの霊感だかも、まったく機能していないんだから!」
「なっ…!」

今度は瑞ががつんと言われ、顔をゆがめた。言われてやんの!と、ちょっと吹き出してしまい、颯馬は慌てて口をおさえた。

「俺だっていつもいつも幽霊みえるわけじゃない!」
「だからこそ別のやり方を提案してんだろうが!」

カーン。戦いのゴングが鳴った。両者はがばっと立ち上がりにらみ合っている。

「危ないことじゃなくてもいいでしょ!状況考えて下さいよ!」
「じゃあほかになにかあるのかよ!」
「うぐ…っ!」
「ほらないやろ!」
「あるし!考え中だし!先輩のあんぽんたん!」
「小学生かおまえは!」
「高校生ですう〜小学生がこんな大きいわけないでしょ〜」
「さりげなく身長自慢しやがって!」

喧嘩の応酬を、お茶をすすりながら見守る。なんだかんだ、仲がいいからケンカするのだろうし、本音で相手に自分の思いをぶつけあえるのは素晴らしいことだ。あーやかましい。ほっといて俺もお風呂いただこう。

客間に二人を残して廊下へ出る。今日も冷たい闇の夜だ。