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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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彼方より還る



女性陣が風呂に行っている間に、颯馬らは客間で先ほど郁が遭遇したものについて検討をしていた。真剣な顔の伊吹と瑞に気おされ、颯馬もまた頭をフル回転させる。

「歴代当主だけじゃなくて、別に死んだ女がいるはずだ」

そう結論付けた瑞に、颯馬はさきほど伊吹とともに紐といた古多賀家の家系図を広げて見せた。

「確かに志帆ちゃんの言うように、長男は若くして亡くなってるんだよね。記録を辿ると、かなり昔までさかのぼるんだ」

志帆の父も、二人の男児を成して死亡。何代も前にもずっとずっと遡っても五十代まで生きられたものはいない。明治以前の記録は戦争でやけてしまってないとのことだが、その中でも長男は死んでいるものと推測できる。いつから?どうしてこんなルールを強いられるようになったのだろう。

「反対に女性は長生きだよね、比較的。若くして亡くあることはあっても…戦争もあったし、当然病死もある。でも、長男のように若くして必ず死ぬというルールには縛られてはいない」

志帆の話では、母も祖母も曾祖母も存命だと言うし、女性には影響がないというのは本当らしい。

「血まみれの女。あの女だけが、一族の法則から外れた死に方をしたのか…?」
「んー、そもそも、古多賀一族の女性だという確証もないよねえ」

聞いてみるしかない、と言ったのは伊吹だ。

「あの女は、今日も俺を探しに来るよ」
「先輩」
「日が落ちて、颯馬の結界の力が弱くなってる。視線を感じるんだ。今夜も俺を探すはずだ」

昨夜夢に出てきたという女が、廊下を歩き回る者である可能性は非常に高い。その女が伊吹を狙っているというのなら、彼を介して接触するのが一番の近道なのだろうけれど。

(瑞くん、納得してないんだよなァ)

瑞は腕を組んだまま、むっつりと黙っている。