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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編

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「颯馬くんから、いろんな怪事件を解決してるって聞いています。力を貸してください」

伊吹は、瑞と郁とともに顔を見合わせる。それぞれが戸惑いを浮かべているので、伊吹が代表して疑問を口にする。

「…そういうのはもっと、ちゃんとした霊能者とかに頼むべきではないの?」

命にかかわってくる。高校生の除霊ごっこでは話にならないのでは?

「…長男が死ねば家業は安泰という証だから、一族の当主をはじめ、みんなこの件を解決しようという気持ちはないんです」

ひどい、と郁が口走る。命よりも大切なものがあるなんて。瑞も同じ気持ちだったようで、苦虫を潰したような表情を浮かべている。

「だから、この件は誰にも内密に、わたしが勝手に行っていることなんです。来週の連休、来ていただけませんか?解決してほしい、とは言いません。原因がわかるだけでもいい。兄の寿命を延ばす方法がわかるだけでも、いいの。何が我が家を呪っているのか…わたしは知らなくてはいけない」

必死の涙声を聴いて、瑞が頭をかいた。

「…俺らにできるのは、視たり聴いたりすることくらいですよ。ゴーストバスターでも霊能者でもないんです」
「それでも、何もわからないまま見殺しにするより、ずっといいんです」

志帆はそう言うと、テーブルの上で二つの拳をきつく握った。

「兄が死ねば、次に死ぬのは幼いわたしの甥っ子です。こんなこと、わたしには受け入れられない」

伊吹は、その悲壮な言葉に胸を打たれた。家族が、そう遠くない未来で確実に死ぬ。そう言われれば、誰だってなんとか止めたいと思うだろう。たとえ高校生だろうが、幽霊が見える、呪いがとける者がいるのなら、すがろうとするのは当然だと思う。