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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編

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不気味



「どうだ?」

翌朝。朝食の準備をしている志帆と潤子を抜き、瑞、颯馬、郁は客間に集まっていた。あれから足音は現れなかった。不安なまま夜明けを迎えた。

「眠ったよ。簡単な結界を張ったから、しばらくは大丈夫。弱いやつなら近づけないし、明るいうちは効くはずだよ」

伊吹の布団の周囲を、天狗池の御神水で清めたという颯馬が戻ってきた。ゆうべ殆ど眠っていない伊吹は、奥の座敷でようやく深い眠りに落ちている。

「よかった、おまえがいて」
「でしょ?結界くらいならおまかせ。いろいろお守りグッズ持ってきてるからね」

得意げな颯馬。聞けば、何も事情を話していないのに、あの強面のじいちゃんが黙って持たせてくれたのだという。憎らしいが、神社の跡継ぎである彼の力に頼らざるを得ないようだ。

「でも正体がわからないと対処の仕様がないよ。しっかり調査しなくちゃね」

そうなのだ。

「どうして神末先輩なの?祟られてるのは長男でしょ?先輩はこの家とまったく関係ないのに、どうして狙われるの?」

郁が不安そうに続ける。瑞にもわからない。まったくわからない。なぜ伊吹なのだ?ここにいるのは、古多賀を祟る者のはずなのに。

「…このまま先輩に負担がかかり続けるようなら、調査は中止することになる」
「そうだよね…」

あのひとに何かあったら…。瑞は不安につぶれそうになる胸をおさえる。
狙われる理由も原因も、正直どうでもいい。本当に危機が迫っているのなら、この屋敷から逃げ出さなくてはならないだろう。

「まあ、まずは朝ごはん食べてからだね」

颯馬が笑う。場違いなさわやかな笑顔で。