そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編
「怖い夢を見たんだ」
どんな、と瑞は聞き返す。
「この部屋で眠っていると、女が入ってくるんだ…血まみれの手で布団をはいで、顔を覗き込んでくる夢…」
ぞ、と背中に怖気が走った。鮮明なイメージが瑞の脳内に再生される。
「女と目が合って目覚めるんだけど、まだ夜の中で、また足音が近づいてきて、覗き込まれる…延々それを繰り返してた」
女、と颯馬が腕を組む。
「じゃあ、さっきこの部屋に入ってきたのも、その女性なのかなあ?」
「…それで伊吹先輩、その夢どうなったの?」
思い出そうと頬に手を当て、伊吹は驚くべきことを告げたのだった。
「名前を、呼ばれた。見つけた、こうずえいぶき、って」
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作品名:そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編 作家名:ひなた眞白