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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編

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布団に潜り込み息をひそめる。寝たふりを決め込んだのか、隣の布団からは颯馬の気配がスーッと消えていく。瑞の隣で、伊吹の身体は震えていた。怖がっているという様子にしては異常だ。

(先輩どうしたんだ…なにかおかしい…)

これまでにも似たような事件を一緒に経験してきた。怖がりの郁に比べ、さすがは弓道部主将だと思えるようなどっしりと構えた理性的な伊吹を見てきたから、この状態は普通じゃないと瑞は思う。伊吹はなにを恐れている?

カラ…と襖の開く音がした。その瞬間、ぴんと音をたてて空気の流動が停止するのが分かった。空間が凍り付く。耳がきんと痛んだ。いる。入ってきたのだ…。

「……」

サ…、サ…、サ…、と畳をすって歩くゆっくりとした音が、闇に反響している。瑞は息をとめてその気配を伺った。

探している…。なにを…?誰を…?

やがて気配が静かに細くなり、すっと消えるのがわかった。と、視界が明るくなる。電気が戻ったのだ。瑞は布団をはいで、明るくなった部屋の中を見た。

誰もいない。襖の開いた気配もない。

「いっちゃったみたいだねー」

颯馬が呑気に出てくる。伊吹は青い顔をしたまま、口元をおさえて目を閉じている。

「先輩、平気?」
「俺、なんかあったかいものもらってくるー」

颯馬が出ていく。スマホを見ると、午前三時を過ぎたところだった。騒ぎを聞きつけてか、隣の部屋の襖が開き、不安そうな顔の郁と志帆が顔をのぞかせた。