そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編
「いつか」の子ども時代。大人たちに守られ、何も怖いことなどなかった子どもの自分。そう、怖いものなどなかった。この、真夏でもひんやりと冷たい手の持ち主と、心を交わすまでは。別れが来ることを、想像すらしていなかった頃までは。
「なあ伊吹、その家、ちょっと怖いからな」
手を繋いで歩いていた瑞が、歩みをとめてそう言った。
その家…?
「気をつけろよ。俺はもう、ここからじゃ護ってやれないから」
「え?」
.
作品名:そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編 作家名:ひなた眞白