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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編

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「ねー、賑やかだね隣。楽しそー。いいなー」

颯馬が嬉しそうに言う。隣の部屋からは、何やらキャアキャアと楽しそうな声が聞こえている。何を騒いでいるのだろう…。

「俺も女子部屋いきたーい。引っ越していい?」
「ふざけんな」

瑞は冷たく言い放ってから、郁を連れてきたのはよかったのかもしれないと感じていた。暗い影ばかりが目立つ志帆を、あんなふうに笑わせてあげられる郁の明るさは、調査に必要な気がする。

「瑞くん、それでこれからどうするの?」
「ちょっと家の中見せてもらって、潤子さんと志帆さんからちゃんと話を聞こうと思う」
「りょーかい」

とにかく、どんなことが起こっているのかを実際に見聞きしなければいけない。解決は約束できないと言ったものの、引き受けたからにはそれなりに責任を感じている瑞だ。

「伊吹先輩?」

颯馬が伊吹を呼ぶ。彼は荷物を手にして座り込んだまま、ぼんやりと天井を見上げている。なんというか、覇気のない様子だった。

「どうかしました?」
「……ああ、」

ようやく気付いた風にこちらを見るが、その目は夢から覚めたばかりのように焦点があってない。弓を引いているときとはかけ離れたその表情に、瑞は眉根を寄せた。

「…どうしたの?」

そばに寄って肩を軽く叩く。本当に軽く叩いただけなのだが、伊吹の身体が虚脱したようにぐらつく。

「なんか…力が出ないんだ…」