そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編
「あたし霊感とかなくて…綺麗で広いおうちだな~としか…ごめんね」
まるで役立たずである。しかし志帆は、ほっとしたように笑みを浮かべるのだった。
「ううん、郁ちゃんがそう言ってくれると、なんかホッとする…郁ちゃんが来てくれて、よかった。ありがとう…」
確かにあの男子3人だけでは、志帆も心が休まらないかもしれない。自分の存在が、少しでも彼女のつらい気持ちを癒すことができるなら嬉しいと思う。そういう意味で、颯馬は自分にも声をかけたのだろうか?
「おうちのひとみんないなくて、心細いでしょ?」
「うん…でも、潤子さんがいるから。寂しくはないよ」
「そっかあ」
志帆にとって母親がわりだと言っていたっけ。心を許し、信頼しているのだろう。
「郁ちゃんは、瑞くんと付き合ってるの?」
「え!?なんで!?違うよ!?」
突然話が変わり、郁はうろたえる。
「仲良さそうだったから…違うの?」
「ち、違うよ!」
「でもその反応は…好きなんでしょ?」
「なんで!?」
「瑞くんを見る目がなんか…」
「うそ!バレバレ!?」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「きゃあぁあぁあー!!」
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作品名:そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編 作家名:ひなた眞白