そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編
ベッドの上に起き上がる。部屋は暗い。朝の気配はまだ遠い。寒々しい空気が、指すように肺の中に入っていく。
「なにいまの…」
夢の中の警告、自分自身からの。俺のお役目…。伊吹を守る…。
先ほど聴いた、古多賀志帆の一族の話に関係があるのだろうか。夢の中で警告してくるのは、以前は死んだ祖母だったが。
(あれは…前世の俺?)
いまではない時代で、伊吹とともに生きていた時代の自分。そんな気がするのだ。
自分自身の内面から、もっというならば魂からの警告…?
じっとりと汗をかく背中。瑞は嫌な予感を覚えながら、夜の中で黙する。
なにか、とてつもないことが待ち構えている。そんな予感がするのだった。
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作品名:そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編 作家名:ひなた眞白