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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編

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森だ。いつかも夢で見た森。深い緑に、月の光が注いでいる。夜だ。月明かりが、毒々しいばかりに降り注いでくる。瑞は一人、夢の森を歩いている。懐かしいような、それでいて胸騒ぎがするような不思議な感覚とともに。

「…あれ、」

開けた場所に出る。鏡のように美しい池があり、その水面に満月が浮かんでいた。池のほとりに、誰かが立っている。ミルクティーのふわりとした髪。Tシャツにジーンズ、スニーカー姿。

(…なにこれ、俺じゃん)

目の前にいるのは、瑞だ。もう一人の自分が、じっと睨むようにこちらを見つめている。対峙すると、もう一人の自分は口を開いた。苛立ったように。焦れているかのように。

「覚えてるか?」

問われた。自分に問われるというのは、おかしな感覚だ。自分自身を評するのにいささか使いたくない言葉だが、態度がでかいというか、ふてぶてしいなと瑞は思う。

「何をだよ」
「前にも、似たようなことがあったろ」

目の前の自分はそう言った。

「おまえさ、ちゃんと伊吹を守れよ」

鋭い瞳が瑞を射る。これは警告だ。瞬時に理解する。ゆら、と視界が歪んでいく。夢が終わる。意識が現実へと帰る直前、瑞は声を聞いた。


「――それがおまえの、お役目だったろ…」


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