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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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影さえ消えたら 6.暴露

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 けれど今ならわかる。それは叱咤ではなく、息子の成長を見届けられない父が最後に抱いた希望だったのだと――なのに俺は、すぐにあきらめては逃げ出して――

 自分のことも綾女のことも終わりにはしたくなかった。目の前で消えようとしているこの命を何としても守りたいと思った。だから今度は絶対にあきらめない。隼人、おまえも――

 小さい隼人を抱きかかえたまま、岸にむかって泳ぎ始めた。酸素が足りず、肺が苦しく、視界はぼんやりとしていた。けれど決して止まらなかった。冷たい泥水の中で、生命の煮えたぎるような熱さを感じていた。

 彼の手には赤いリボンの帽子があった。溺れかけても、それだけは守りたいようだった。流されてしまわないように注意しながら、隼人の体を岸の上に押し上げた。