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どんぶらこ

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 そんな話を毎晩聞かされて育てば、男児たるもの、黙っていても鬼退治の旅に出るわな。きび団子を腰に下げて家を出て十数年。村を襲う野武士共をひとり残らず叩き斬り、獣たちの助けを借りてはいるが、鬼ヶ島の鬼どもを完膚なきまでに切り刻んでやった。
鬼の子供を捕らえた鬼の総大将の目の前で指を一本づつ切り落としてやったら、ははは、鬼の目にも涙は流れるんだな。笑えたよ。腹の底から笑えたよ。
そしたら今度は子鬼がびぃびぃ泣きやがって。
指を全部切り落としてやったから次は肘だ。
その次は肩だ。
鬼のくせに赤い血を流し腐りやがって。
その子鬼の血を親の総大将の顔に塗りたくってやったぜ。
赤鬼の顔に血を塗ってもさ、ははは、赤鬼には変わらんわな。
そしたらひとの親のようなことを抜かしたんだぞ。笑ったな。
「殺生でございます・・ひとおもいに・・」だと。
鬼がよ。「ひとおもいに・・」だと。
目の前で四肢を切り離された子鬼が猿や犬や雉に犯されて食い殺されてゆくざまをよ!
よーく見るがいい!
よく見えるように、瞼を切り取ってやった。
ざまあみやがれっ!ってんだ!
そしたら今度はよ、鬼の野郎、恨み節を並べやがって。
「貴様だけは絶対に許さん、地獄の底に落ちても貴様を呪ってやる!」
とかぬかしやがるんで、まったくお笑いだぜ。
自分が鬼だと解ってモノ言ってんのかヨ!
鬼の総大将殿の口に子鬼の切り取った首を突っ込んでよ。
万力で歯を丁寧にいっぽんいっぽん抜いてやった。
いいか、お前は鬼なんだよ。絶対的な悪なんだ。悪い奴ぁ地獄に落ちるのがこの世の常だぃ。
こんな子鬼ですら、お前のような醜く臭い鬼ですら、皆同じだ。
そういう鬼の分際でよ、鬼退治に来たこのおいら様に恨み言を並べるとは冗談にしても性質が悪い。お前のような奴が地獄に落ちたら閻魔様も大変だろう。だから徹底的に・・楽しませてもらうぜ!ってさぁ云ったらさ、泣きわめきやがった。
まだまだこれからでぇ。
生きたまま、あぁ簡単にお前だけは殺しはしない。
生きたまま、煮え湯に浸からせてな。
どうだ、風呂に入れるとは思わなかったろ!ってさ。
そしたら助けてくれとか抜かすんで・・歯もないのによ。
風呂に入るときは、極楽、極楽っていうもんだぜ!
って風呂釜の下の火に油ぁ足してよ。いい具合に煮えたからさ。
それから冷たい海水に放り込んでよ。
したら鬼の野郎気絶しちまいやがった。
だから起こしてさ。起こしてから目の前で、全身の皮をひんむいてやった。
あぁこの腰巻が鬼の皮さあ。なかなか丈夫でいいもんだぜ。
それから?あぁ鬼と云えば頭の角じゃないかぁ。
ところがよおいらたちが一気に攻め込んだらびびっちまったのかな。
鬼の野郎ども角をへこませちまったみたいだぜ。

 まぁ後片付けは・・・犬と雉と猿が喰っちまった。
あいつら財宝には興味がないっていうから。まぁ鬼の肉でも良かったんだろうな。おいらもひとくちだけ喰ったけど筋張っててさ、美味くはないぜ。財宝ったってたいしたもんがあるわけじゃない。
せいぜい鬼の金棒ぐらいじゃないか。
帰りの道中は、道々で褒められどおしでな。
誰もが道を開けるわ。酒は飲み放題だわ。女も抱き放題だわ。
情け無用の桃太郎とはおいらのことだぜ、てなもんよ。

作品名:どんぶらこ 作家名:平岩隆