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天井裏戦記

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五 戦況報告



 それから一週間、授業とバイトの折り合いがつかずに会うことがなかった亮太郎と慎平。いつもの食堂のいつもの席で、小夜と結奈を交えて戦況の報告をしていた。
「ほいでよ、ネズミ獲りはどうなったん?」
「それがじゃ……」亮太郎は首を横に振る。成果は上がらなかったようなのは聞かずとも分かる。
「ぶち走り回ってるのに何でじゃろう?」
「カゴの入り口が狭いとか?」
「ウーム、そんなことはない。説明書通りに置いたぞ」

一同沈黙、賑やかな食堂の喧騒が間を取る。
「ところでエサ、何にしたん?」
「……チーズ」
「チーズぅ?」
 即答に近い回答に三人が笑い出した。
「なんでなんで?しかもカマンベール入りの高級品よ。きゃつらには勿体ないくらいの」
「チーズがネズミの好物なのは大間違いやで」
「そうなん?」
「だって考えてみいな。亮さんの家のケーブルかじったんやで。柔らかいものやなくて堅いものが好きなんやんか」
「そうそう、ネコ型ロボットの耳くらい硬いもの」
 間の手に入れた小夜の渾身のボケに男二人が笑う。

「言われて見れば……、確かにカマンベールは柔らかいな」
 両脇からつっこみが入る。チーズの種類が問題とまで言うと亮太郎がへこむのでつっこみもその辺で止めた。
「偏見って面白いね」
 結奈が手を口に当てて笑うと場が和んだ。
「そうそう、あれもそうだよ」慎平が両手で枠を組み中心の少し上に上げて想像ビジョンを作った「偏見言うたら、虫歯が歯の上で道路工事してる絵」
 四人の頭にお決まりの画像が浮かび上がった、お育ちのレベルは違っても同世代の刷り込みであるのは間違いないようで、我に返って互いの顔を見るとクスクスと笑いだした。
「それを言うなら海賊船の船長も一緒やんか」
 話が終わりかけたところに亮太郎がさらにかぶせに入る。、
 そう言いながらノートに絵を書き出した。ドクロ帆船に乗ったドクロ帽子にドクロ眼帯、肩にオウムが乗ってるこれもお約束の船長だ。ついでに片腕は鉤型のフックになっている――。
「野郎ども、やっちまえ!」と続けると慎平がオウム声で
「ミナゴロシダー!」
 虫歯にしても海賊にしても、実際の姿はそんなワケがない――。

「ま、いずれにせよ餌は硬いものがカタいということで」
「もしかしてそれでオチ?」
「はい、お後がよろしいようで」
と言うと同時に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。授業のある者ない者、どちらも時間前に行動するわけでもなくダラダラと解散した。

作品名:天井裏戦記 作家名:八馬八朔