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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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影さえ消えたら 2.復元

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「そうか……あいつももうそんな年になったんやな……この家はどないするつもりなんや?」

 結婚して、相当な苦労をしてこの古い平屋を手に入れたことは、母から聞かされている。隼人は身を縮めて言った。

「まだ決めてないけど、もう住む人間がいないから……」
「……それが時代の流れ、ちゅうもんやな」

 父は遠い目をして布団の上に座った。母の遺品整理をしながら、もし父が亡霊になって現れでもすれば、家の処分について責められるだろうと勝手に考えていた。けれど人の心はわからない。ましてや親のことなど、子供は何もわかっていないのだと改めて気づかされる。

 頭が痛むのか、父は顔をしかめながら手早く薬を飲むと、床に入った。

「隼人がまたいらんこと企んでるみたいやし、ちょっとだけ相手したってくれるか。ほんまは父親の俺が相手したらなあかんのやけど、この体でうろついたら結子に迷惑かけてまうからな」

 彼らの企みにうっかり賛同してしまった、とは言えず、隼人はうなずいて父の体に布団をかけた。別れを告げて、和室を出る。
 父が何度も言った「結子」という優しい響きは、ずっと頭の中でこだまし続けた。