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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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あの日、雨に消えた背 探偵奇談10

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「先輩、あたりにいこ!」

瑞は喜んでそちらへ駆けた。歩いてきたとはいえ、身体はまだまだ冷えている。子どもや年配の参拝者が、ドラム缶に手をかざしていた。

「何なにどうしたのー?瑞くんじゃん!」

その輪の中の人物が、近づいてきた瑞らに気づいて声をあげる。

「颯馬(そうま)?」

子どもや参拝者に囲まれているのは、紺の作務衣姿の颯馬だった。竹ぼうきを手にしている。

「何してるんだ?」
「あれ神末先輩も?こんにちは。何って、掃除?ここうちの神社だから」

うちの神社!?声をはもらせ、瑞と伊吹は目を丸めた。

天谷(あまたに)颯馬は同じ高校の一年生だ。特別進学クラスに所属する、ちょっと他とは毛色の違う生徒である。今日も婦女子を虜にする爽やかな笑みを浮かべていた。会うたびに違う女子とくっついている男だった。

「おまえ神社の子なの!?」
「うん。家はここじゃなくて麓なんだけど。うちが代々神主してるんだよ。今日は部活ないから手伝い。もうすぐ祭りもあるから忙しいんだよね」

このチャラ男は、見た目や言動に反して油断のならない男だった。独自の信念や正義をもち行動しているようで、チャラ男はそれを隠すための演技なのかもしれないと思う。
更に、瑞と伊吹の不可思議な因縁を見抜いている節があり、ことあるごとにそれをほのめかして揺さぶってくるのだった。一言で言えば得体のしれない男なのである。

それにしても神社の息子だとは初耳だった。