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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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あの日、雨に消えた背 探偵奇談10

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(…でもまた、全部だめになっちゃうかもしれないけど)

ここに来れば、何かわかるかもしれない。自分たちを取り巻く、「いつかの記憶」について。伊吹はそれを知ることをずっと恐れていたのだけれど、もう覚悟を決めたと言った。だからこそ、こうしてなんの躊躇いもなく本音でぶつかれるようになったのだけれど。見たくないものを、知らなければよかったことを、この先に経験することになれば、この関係も崩れてしまうかもしれない。でも悔いないと決めたのだから、瑞はもうグダグダ悩むのはやめた。天狗だろうが地蔵だろうがなんでも来いだ。

「週末は祭りがあるって言ってたな」
「ああ、そういえば…」

聞けば、週末は沓薙山の祭りだという。登山道にはちょうちんが飾られている。灯がともされ、神々しい雰囲気に包まれるというのは、歴史教諭の山崎先生の言だ。頂上の天狗神社の境内では、夜店なども並び賑わうらしい。

「いいですね、祭り。リンゴ飴喰いたい」
「俺、焼きそば」

信仰が生きているこの山と麓の学校には、四柱様(よはしらさま)と呼ばれる神が住まう。それらの神は、どうやら特殊な魂の持ち主である瑞を、監視しているらしい。危険だと思われているのか異端だと嫌われているのかはわからないが、自身のルーツを知るために、何か力になってくれるかもしれないと思っている。

二十分ほどで山頂に着く。海が見える美しい景色の奥。大きな鳥居が見えてくる。祭りが近いこともあってか、たくさんの幟が風にはためいていた。

「あ、たき火してる」

境内の隅に煙があがっている。