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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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隣と彼方 探偵奇談9

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臆病者と恋の病



学祭前日の夜。各クラスが明日の本番に向けて最後の準備に取り掛かっていた。日の落ちた教室に普段の面影はなく、そこはお化け屋敷に変化していた。窓には黒い布がかけられ、外の光は一切入らない。天井の蛍光灯には赤や青のセロファンが張られている。ブラックライトに照らされた室内は、段ボールで仕切られた迷路になり、枯れ草の香りが漂っていた。荒れ果てた西洋墓地。かなり本格的である。

「雰囲気でてるね~」
「いい感じ!ザ・墓地!バイオハザード!」
「結構怖そうじゃね?」

クラスメイトらが出来上がりに満足そうにしている横で、郁も頷く。達成感だ。本格的なお化け屋敷に、お客さんたちの反応はどんなものだろうか。

「音響もばっちりだな!」
「あとは明日、脅かし役が頑張るだけだな」
「いま衣装合わせとメイク中だよ」

脅かし役は、幽霊や妖怪に扮してお客を脅かす。郁は釣り竿につけたおもちゃのコウモリをお客の顔にペタっとやる係である。怖いものが苦手な郁だが、脅かす側というのは楽しみなものだ。わくわくしてくる。

「瀬戸の血まみれナースやべえ!」
「瀬戸ちゃんいいわあ~」

瀬戸青葉は、背の高さを買われ、血にそまったナース服に長い黒髪のウィッグをかぶっている。美波のメイクで青白い顔は、かなりホラーだった。

「瀬戸ちゃん怖い!いいね!」
「これで客脅かして日ごろのストレス発散するわ」

あっけらかんとしている青葉だが、紫の唇や血のり、目の下の壮絶な隈のせいですごみがあった。怖い。美波のメイクすごい。

「郁ちゃん、須丸見た?めっちゃおもろいよ」
「須丸くん?」
「あ、ほら来た来た」