隣と彼方 探偵奇談9
青春疾走
学祭を再来週に控えた放課後。
月に一度の部活動主将会議が始まる。いつもの面々、いつもの風景。しかし、今日の生徒会室には、緊迫した空気が流れていた。口数の少ない主将達。腕を組み、口を閉じ、無言で闘志を燃やしている。
「毎年のことながら学祭前の主将会議はピリピリしてますね~」
生徒会長の呑気な声など、無言で牽制し合う主将たちには届いていない。
体育祭メインイベント、部活対抗リレーを勝ち抜き、我が部の素晴らしさを、強さを証明する。
文武両道を掲げるこの学校では、運動部、文化部、ともに自分の部活に絶対的なプライドを持っている。それぞれが日夜鍛錬に励み結果を出しているのだ。「うちが一番強い」、そう考えている。学祭での対抗戦は、うちが最強であるということを証明するただひとつの機会なのだった。
伊吹とて例外ではない。自身の率いる弓道部と部員らに、絶対の自信と信頼を持っている。これは負けられない戦いなのだ。そして、戦いはすでに始まっている。
「えー、ルールは例年通りですが、改めて確認します。各部活動のバトンは、運動量、各部活の特性等のハンデを考慮し、生徒会が指定します」
これは弓道部はかなり有利なのだ。なんせ軽い矢だから。
「各部、代表選手四名を規定期日までに提出してください。性別も学年も問いませんが、アンカーは必ず主将が走ること。予選を通過した六チームで決勝を行います」
主将間に見えない火花が散っている。
まずは確実に予選を突破しなければ、頂点には届かない。特に陸上部、やつらはリレーに関してはスペシャリストだ。あいつらをどうにかして引きずりおろさなくては、勝利はない。
「リレーに必要な敏捷性では、うちに敵う部はないだろうな」
バドミントン部主将の先制ジャブに、サッカー部主将がいち早く反応する。
作品名:隣と彼方 探偵奇談9 作家名:ひなた眞白