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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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隣と彼方 探偵奇談9

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応援席とトラックの間に張られたロープ前には、カメラを構えた女子がぎゅうぎゅうに集まっている。

「須丸くんがんばれー」
「こっち見たよ。カワイー!」

郁は弓道部の応援席からそれを見てまたしてもやもやしていた。見ないで、と自分勝手な苛立ちが沸き上がる。

「おらおめーら声だせえええ!」
「伊吹―頼むぞー!」

二年生の声で我に返る。やきもちをやいている場合ではない。

(ガンバレ弓道部!)

ここまで来たら優勝しかない。郁らも声をそろえて声援を送る。いよいよスタートだ。

『それでは決勝を行います。第一レーン、野球部。第二レーン、水泳部…』

放送委員のアナウンスが緊張感を高めていく。選手の紹介が終わったあと、ついにスタートのピストルが鳴った。

『さあ決勝です!一斉に飛び出しましたが、ここは野球部がリード!優勝候補の陸上部は、ハードルのせいか遅れをとっているようです!』

弓道部いいもスタートを切った。二走に、三位でバトンが渡る。

「おし!いいペース!」
「桂田!抜け抜け!」

桂田が前を行く水泳部を抜かすと同時に、後ろから陸上部が急激に追い上げを見せた。

「陸上部やべえええ!」
「逃げ切ってくれー!!」

叫ぶ部員たち。郁は無意識に組んだ両手を痛いくらいに握りあった。ここでレースは大きく順位を変えた。次は、いよいよ瑞の番だ!

『さあ第三走者は一年生!トップの陸上部に並び、大健闘の弓道部、ほぼ同時にバトンが渡りました!わが校の二代イケメン、須丸瑞くんと天谷颯馬くんの対決です!』

女子たちから割れんばかりの大歓声があがる。冗談ではなく、地面が揺れたかと思う迫力だった。