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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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隣と彼方 探偵奇談9

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「瑞く~ん」

声をかけてきたのは天谷颯馬だ。相変わらず軽薄な笑顔を浮かべている。だが瑞はもう知っている。この男は油断ならない。こいつは、何かを知っている。自分と伊吹の因縁について。そして静かに揺さぶってくるのだ。今度こそ、後悔しない生き方を選べと。

「がんばろーねー。なんかうちの部長めっちゃ張り切っててさ」
「あー、あのひとほんと熱いよね」
「しかしハードルってでかすぎだよねえ、ハンデ。めっちゃ重いんだよ?」

そうまく~ん、と女子一同の大声援が届き、颯馬は愛想よく手を振っている。瑞はそれに構わず、アンカーのスタート位置で、他の主将と出番を待っている伊吹を見た。
その背中は薄く華奢で、屈強な運動部の主将らの中では頼りなく思えた。だけど瑞は知っている。あの主将が、どれほど頼りになり、信頼できる人間なのかを。

勝ちたい。うちの主将を一等賞にしたい。
アンカーの位置に見える背中に、瑞はそんなことを思うのだった。

「うちの」
「ん?なに?瑞くん」
「うちの主将が一番だ。それを証明するよ」

そんな言葉が出た。颯馬は少し驚いたように目を丸くしたあとで、にやっと笑った。ひどく嬉しそうに。あ、なんかむかつく。絶対負けたくない。闘志に火が付き、瞬時に指先までめぐるのがわかった。あんたら似てるよと周囲に言われることも多いが、瑞自身はこの男に同族嫌悪に近い対抗心など持っていないと思っていたが、こういう展開なら話しは別だ。勝負なら負けたくない。絶対に。



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