小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

隣と彼方 探偵奇談9

INDEX|12ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 


「一之瀬は、どうなの。宮川主将」

二回目の青信号に変わったところで、瑞は歩き出しながらそう言った。それに連なりながら、郁は静かに答える。宮川に憧れていて大好きだったことは事実だ。
だけど、不思議だ。宮川に憧れていたころは毎日楽しくてうれしくて幸せだったのに、瑞を好きだと自覚してからは、苦しくてつらいことのほうが多い。なんでだろう?

「いまは…違うから…」
「え、そうなの?別に好きなひとがいるんか」

夏のころは、よくこのことで瑞にからかわれていたものだ。瑞は驚いたようにこちらを見た。

「一之瀬?」

住宅街の街灯の下で、郁は立ち止まる。訝しそうに振り返ってくる瑞を、郁はまっすぐに見つめる。

「あ、あたしがいま好きなひとはね」

言っちゃおうか。だめ。でも。

「最高に、優しいひとなんだ…」

いま目の前にいる。きっと興味もないだろうに、聴いてくれているひと。

「…あたしの好きなひとは、たぶん間違いなく世界で一番かっこいい…」

こんなずるい方法でしか気持ちを伝えられない臆病な自分。瑞が不思議そうにこちらを見ている。もっと真正面からぶつかる勇気があれば。自信があれば。気持ちを伝えても、関係を壊さなくてすむ絆があれば。

それ本当に、と瑞が静かに尋ねてくる。

「…え?」

不意を突かれ、郁は目を丸くなって聞き返す。

「本当に最高に優しくて世界で一番かっこいいなら、一之瀬がそんな辛そうなのっておかしくないか?」
「……あたし、辛そう?」

そんな顔してたのだろうか…。途端に恥ずかしくなって俯く。