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夢風船(詩集)

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危険を察知するようになる

計器に頼るよりも先に
機器を知るのが
人間に備わった能力なのだ

敏捷な行動がそれに連鎖して
起これば
何事もないのだが
常にそうなるとは限らない

自動装置という発想が
それを補うように採用されているが
ここにも誤作動の危険がある

人間の本能と自動装置
そのいずれに頼るのか
人によって判断が違うだろう

自然本能が減退している現代人は
そのために
新しい危機を招いている

自然に帰って
本能を取り戻すことが
生き物である人間の
再生に役立つのではないか

自然災害を予兆するのは
気象の変化と動物の行動
科学はまだこれを解明していない

自分の影が大きく伸びる
坂道を
緑の森の奥へと歩む
戻ることのない人生の




   魂 
魂は自由だ
自分自身によって
存在している

生老病死は
肉体の次元で
発生している

だが
魂にそれはない
無限の存在
なのだ

無形のものの
偉大さが
そこにある

魂は
気によって
現われ
活動する

その活動によって
人は
生存のかたちを
造られる



   戦 
昔を偲ぶ古兵たちも
八十路になって
戦の庭も苔むすかなた

二度と戦など
すべきでないと
誓って生きた
残された人生を

けれど戦は
世界から消えていない
結局
地球の上では
戦は絶え間なく続いている

どうすれば
戦がなくなるのだろうかと
暗いおもいのなかにいる
だけど
それだけでは
なにも解決しないから
戦のない世界に向かって
ありの穴ほどの道でも
見つけねばならないだろ


   
   老年
老齢だから
すべては終わったと
思う心境も
あるだろうが
やるべきことを
まだやっていない

厄介なのは
体力のピークを
とっくに過ぎて
下降線の終末に
近いことだ

精神力というか
気持はしかし
まだやろうとする
焦りを持っている

本当の終末が来るまで
青春だという
気力を持ち続けて
がんばることに
すべてを賭けるだけの
健康は保持したい

   
   
   やるせない思い
新しい旅が始まる
それは
繰り返される日常の
やるせない思いのなかで
やってくる
非日常への願望だ

日々の積み重ねの上に
築かれる
堆積物のような人生
それが
退屈なのだろうか

変化がよいと思う
その心の隙に
人生を狂わすように
事件が顔を出して
苦しみを与える

平穏無事に続く時代を
願っているのは
神と戯れている
幼児だけだろうか

やるせない思いとは
成長する生命の
輝きを失ってしまった
大人の感覚であろう

ひたすらに歩く
限りなく続く道
その果てが見えない

黙々として歩く
ただひたすらに
足を運ばせている

それが何処へ行くのだと
わかっていなくても
歩くことだけが
与えられた使命だと
兵隊は言った

指揮官だけが知っていて
兵隊には
何も知らさない
軍隊とは
そういうものだった

人生そのものではないか
いのちがいつ果てるか
わからない
それでいてもくもくと
生きている

すべてを知っているのは
神のみ
そうではないだろうか


    
    生命
生きるってことは
簡単なようで難しい
誰でも
それを経験している
だろう

自分から
生まれてきたのでない
産み落とされた
だから
命は授かったものだ

母親が
子を授かったというが
命は
子の中で成長する

親孝行と
子が親を大切にするは
イコールなんだ
一方通行ではいけない
子は親のものではなく
親は子のためにある

命は教えているのだ

命は
親子のものではなくて
授かったものという
命の神秘性が
永遠の生を裏づけている


    
   殻
古い殻に
閉じこもるなら
新しいものは
見えなくなる

殻をやぶって
雛が飛び出す
生命の
誕生が美しい

姑の悩みは
古い殻を
背負っていることか

嫁の強さは
破るべき殻を
持たないことか

雛は
親がなければ
育たない

娘は
親の庇護を離れて
嫁になる

この輪廻の殻は
転生流転する



  男女
女は男よりも
生き方が上手だと
女が言った

その自信に満ちた
表情から出ているのは
永遠の微笑み

その強さのみなもとは
母たること
そのことにあるようだ

男は
そのことに弱いのだ

生まれながらの性の
強さを
女は与えられている

女はその強さを
月に隠しているのだ

男はたわけたように
太陽を背負っている

女は
潮の満ち引きをつかさどる
月の強さで
男を引き寄せているのだ

満天の星のかがやきの中で
月は
冷たいばかりの白い光で
地球を照らしている
男と女の影を映して



   気遣い
駆け足でやってきた
太郎
何を間違ったか
井戸に首を突っ込んだ

それを見た妻の
花子
飛び込んではいけないと
体を抑える

それを見たのは子供の

水をのみたいのだろうと
つるべを手繰りあげる

太郎の気持は
何処にあったのか
それは問わないとして
嬉しいのは
花子と桜の気遣いだった

   

   蕾
朝は雨もよい
桜の蕾は膨らんで
しっとり

午後には晴れると
天気予報
雲行きを見ながら
傘もって
出かけることに

花冷えというよりは
気象の変化が
気になる季節だ

4月は新年度の始まる
不安定な時
新人は蕾なのだが
咲かないで
落ちることもある

蕾を見ながら
満開を待っている
 
 
 
  新入社員
フレッシュな
感覚があふれる
新入社員の
まじめな応対に
店頭は
和やかににぎわう

何よりも
その若さが
客を喜ばせる

行動が
きびきびしていて
買物客は
余分に買いたくなる
雰囲気だ

まじめに
仕事に取り組んでいる
姿勢が
ほほえましい

この気持
忘れないで
フレッシュな味を
いつまでも
たもって欲しい

店員の
やる気と元気が
売り上げを
のばしてくれる

客も
新しい気持で
いる
4月なのだ


   卒業の春
さすらう風が
春に別れを告げるのも
もうすぐ
わたしの家の窓辺から

そうだよ
わたしの春は浮気もの
桜が散れば
遠くへ行ってしまう
風に花びら運ばせて
川の向こうに

忘れよう
春に咲いたささやかな
恋を

あのひとも
きっとどこかに
行ってしまうでしょう
卒業
したんだからね

   
   
   桜が散る
桜が散るよ
一週間のいのちだなあ
潔いと
ほめる溜息

そろそろ覚悟を決めて
新緑だ
なんだか忙しいのだよ
新入社員
配属先が決まりそう
だから
遊びの本番だというように
浮気だって
うろついているようだ
まだこんなに惰眠できると
   
   
   
   桜を惜しむ
咲いた桜に
曇天が覆いかぶさり
気がかりなのは

花をぬらせば
雫になるだろう

風が吹けば
花は散るだろう
無情の嵐と
人は嘆きをもらす

されど
これこそ春のいのち
はかなくも
潔い眺めであるから

そこに
執着しない心がある
仏法の無常観と
別物ではないだろう
   

   
   連休
心が
すっきりするような
新緑の季節になった

さつき、菖蒲、こいのぼり
光もあかるく風もさわやか

この季節には
身体の機能も活発になる

それなのに
作品名:夢風船(詩集) 作家名:佐武寛