道化師 Part 3
龍成の厳しい声、有無を言わせない命令。
俺は、もう解決したものだと思っていただけに、動揺が隠せない。
「警察に捕まったんじゃなかったのかよ、もう、大丈夫って言っただろ、違うのか?」
亮の腕を掴み不安をぶつける。
「ヒロ君、亮にもどうする事も出来ない時があるんだよ。責めないでやって欲しい」
サクヤさんが、辛そうな顔をするけど、何も知らされていないから余計に苛立つ。
「俺は、何をすれば?ミユキの側にいるようにする以外に、ありますか?」
龍成が何枚かの写真を取り出し
「この顔を覚えていた方がいい、兄貴に関係のある組の連中だ。本人が直接動くよりこいつらが動く可能性は高いだろう」
渡された写真を見ていると部屋のドアが開き、龍也が顔を出した。
何故、龍也が…、サクヤさんが話したのか?サクヤさんの方を見た俺に大丈夫と頷き
「龍也、ヒロの隣座って」
緊張した龍也が俺の隣りに来るなり頭を叩かれた。
「ヒロ、俺だけ仲間ハズレにしたな、親友だと思ってたのは俺だけか?兄貴程頼りになるとは言わないが、少しは頼ってくれ」
今回は許してやると肩を抱かれ、ごめんと素直に謝れた。
一海が何故かミユキの兄貴に目をつけられているらしいと、龍成からの情報が以前に入っていたらしい。俺達が別々にいるより四人一緒にいるのがいいだろうとなり、亮の家で合宿の様な生活が始まった。
ミユキは自分の所為だと感じているみたいだが、口に出しては言ってこない。だから、大丈夫だと抱き締め、言葉をかけ、安心させてやるしか俺にできることはない。一海には、知らせていない。優し過ぎる程素直な一海には、ミユキと普通の友達でいて欲しいと願ったから。
一人で住むには広すぎる亮の家だが、五人で住むとなるとかなり賑やかで狭く感じる。
「俺とミユキ、一海と龍也が其々一部屋づつ使うとして、亮さんはどうするんだ」
「俺は、自分の寝室を使うに決まってるだろ。お前らは、奥の部屋を使え」
「奥の部屋って狭いよ。ベット置いたら机ぐらいしか置けないじゃん」
「お前らは学生なんだから、机とベットがあれば十分だろ」
「ベットだってシングル二つなんて無理だ」
「ダブルで一緒に寝ればいいだろう、今までそうだったんだろ?」
そんなこと聞かれると恥ずかしいし、龍也だっているのだから。
「俺は一海を抱っこして寝るからかまわないよ」
なぁ~一海とヘラヘラしてるから、気を使った俺がバカみたいに思えた。
「よし、決まりだな、後は炊事洗濯当番を決める」
「ちょっと待った」
俺と龍也から同時に声がかかり亮は、今度はなんだと眉間に皺を寄せる。
「ミユキは炊事洗濯、全く駄目だ。させたら悲惨な結果になる」
「同じく一海も被害が増大すぎる」
俺達に酷い言われようだが事実だけに顔を真っ赤にし、ミユキは俺を睨み、一海はごめんと龍也の腕にしがみついている。
亮が可笑しくて吹き出し
「了解、炊事洗濯は俺とヒロ、龍也でする」
何かに追い詰められてる様な複雑な気持ちを抱え、それでも五人で過ごす生活は楽しい事になりそうな予感がする。ミユキにも家族の様な雰囲気を楽しんで欲しい。もっと笑顔が増えて欲しいと。
作品名:道化師 Part 3 作家名:友紀