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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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「いつか須丸が誰かのものになってもいいってこと?」
「……」

瑞に特別なひとができたら、ただの友だちの郁には、祝福してあげることしかできないだろう。泣く権利も、行かないでとすがる権利も「友だち」にはないのだから。

「ま、あたしは郁の気持ちを尊重するけど。できることあったら言ってよね」
「うん、美波ありがとう」

なんだか照れくさくなってしまって、郁はアイスティーの氷をせわしなくストローでつついた。

「あれっ、郁ちゃん?」

ふいに呼ばれて振り返ると、背の高いチャラ男が立っていた。右側に、他校の制服を着た綺麗な女生徒を伴っている。

「颯馬(そうま)くん」

天谷(あまたに)颯馬は、数週間前の呪い事件で知り合った特別進学クラスの一年生だった。超絶エリートクラスに所属しながら、女子との浮名を流しまくるイケメンである。

「偶然だね郁ちゃん、部活帰り?」
「うん」
「俺もー。部活終わると甘いもん食べたくなるよねー」

颯馬の右腕に絡みついたセーラー服の女生徒が、少しむっとしたようだったから、郁はひやひやする。

「ちょっと颯馬くん、もういこーよ」
「あーはいはい。じゃあね郁ちゃん。ばいばい」

颯馬は手を振ると出口の方へ歩き出す。

「天谷って見るたびに違う女連れてるよね。郁も変なのに好かれちゃってまあ」
「…女癖は最悪だけど、わりといいひとだよ、たぶん」

正義感が強い彼が、悩めるクラスメイトのために瑞を訪ねてきたのが、事件のきっかけだった。郁と瑞、そして伊吹は、妙に気に入られてしまい、懐かれているのだった。




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