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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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言葉が出なくて、それなのにこみあげてくる感情が瞳からあふれ出してしまいそうで。伊吹は両手のひらで、きつく閉じたまぶたをぎゅっと押さえつけた。どうしよう。何か言わなくちゃいけないのに。

「え、先輩」

瑞のおろおろした声が肩に降ってくる。

「俺の感動的なスピーチに感激しちゃったんですね。すいません俺って語彙力も表現力も豊かだからなあ…」
「…自分で言うな。そして写真を撮るな」

自分は必要とされている。そう思えることが、こんなにも幸福だなんて。
主将として、うまく振る舞えているのか。そんな不安がずっとあったから。それが少し軽くなった。周りのみんなが、少しずつその不安を受け持っていてくれた。それに気づけなかった。自分は、一人じゃない。

「…みんなありがとう。こんなふうに祝ってもらえるなんて夢にも思ってなくて、びっくりしたけど、すごく、嬉しいです」

ああ、うまく伝えられないのがもどかしい。もっと上手に言えたらいいのに。

「俺のほうこそみんなに支えられてなんとかやっていけてる。これからも、力を貸してください」

やっとそれだけ言うと、拍手と歓声が起こった。

「ほら伊吹!ろうそく消せって」
「一気に吹いたら願いが叶うんですよ」

ケーキが目の前に運ばれてきて、伊吹はろうそくを吹き消した。明かりと一緒に、部員らの笑顔が弾ける。