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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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「どんな気分?どうしてほしい?何が言いたいんだ?」

尋ねると、郁は首を振って泣きたい、泣きたい、と繰り返した。

「泣きたい。みんな、大きくなってくの。あたしね、あたしは死んで、もう、大人になれなくてね」
「うん…」
「忘れられて、みんなもう思い出してくれなくなってね、それがいやだったの」

涙を零しながら郁が言う。あたしはもう死んで大人になれない。それはあつしの思考だ。流れ込んでくるあつしの思いを、感情を、郁は自分の口を使って語っているのだ。

「もうあとは消えていくだけなのに、寂しくて、どこにもいけないの。ここにいたらみんながまた、来てくれるかもって、思ってしまう、でももう来てくれないことも知ってる」
「そうか、うん」
「そういう期待を、全部断ち切りたくて、もう会わないでおこうって、あの日、みんなとお別れしたつもりだったのに」

それを聞いて、青葉が息を呑んだ。

「…それであっくんは、あたしたちの前から消えたの…?」

楽しい時間が、いつまでも続かないことを知っていたから。大人になる青葉たちと、確実に離れてしまうことを知っていたから。だから、そうなる前に自分から、彼は関係を断ち切ったのだ。

「瀬戸と、なにか約束してただろ?」

瑞は尋ねた。すると、思いがけない答えが返ってきた。