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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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同じことを繰り返し繰り返し行うのは、正直苦しい。治らないかもしれないという恐怖があれば尚更だ。それでも、絶望していたひと月前とは違う。ここで踏ん張るしかないのだと開き直ってからは、ひたすら繰り返すことは苦ではなくなってきた。同級生たちがどんどん上達している姿に焦りがないと言えばウソだけど、この時間も絶対に無駄じゃないと思えるから。

「よし、今日はここまで」

そう思えるようになったのは。

「ありがとうございます!」
「続きは明日な」
「はい!」

自身の稽古の時間を割いてくれている、伊吹の根気強い指導と。

「お疲れ。明日の鍵開け一之瀬だよな」
「あ、須丸くん」
「はい鍵」
「ありがと。お疲れさま」

最近好きになった、このひとの存在が大きい。

須丸瑞(すまるみず)。同じ一年生ながら、主将を支える頼れる副将。弓がうまくて、背が高くて、誰もがうらやむイケメンで、クールに見えて実はすごく優しい。そして幽霊が見える不思議なクラスメイト。

春に出会って、一緒に弓を引いてきた。夜の中に不思議なものを見て、郁は彼に恋をした。めまぐるしく変わった自分の感情に戸惑いながら、郁はゆっくりと瑞への思いを育てている。