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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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放課後の弓道部。弓を引く部員たちの影が伸びる。部活中は、いつでも心地よい緊張感が漂っている。研ぎ澄まされていく指先の間隔と、的に向かう視線。

「そのまま、三数えて離れ」

弓を引き分けた郁(いく)の後ろで、弓道部主将の神末伊吹(こうずえいぶき)が声かけを続けている。集中して耳を傾けながら、指先、背中、肘、全身に意識を巡らせる。

「いち、に、さん、離れ」

声に合わせて、矢が離れる。

できた、と郁はホッとする。自分のタイミングで離せた。矢は的を貫いてはいないが。

「先輩、待てました!」
「うん」
「つぎ、独りでやってみます!」
「…やってみな」

精神的なプレッシャーが原因になり、早気(はやけ)になり一か月。自分のタイミングで矢を放てなくなった郁は、通常の練習から離れ、基礎の基礎を繰り返しながら、主将に協力してもらって克服に努めている。

伊吹にカウントしてもらうと会がもてるのに、独りで引くと、矢はやはり離したくもないのに飛んでいく。

「ああ、だめかあ…」

治ったわけではないのか。そう簡単にいかないことはわかっているのだけれど。

「焦るなって言ったろ?」
「はい…」
「あと四本。次は四秒だ。打ち起こしから会まで、もう少し丁寧に呼吸しろ。雑になってるぞ」
「はい!」
「はじめ」