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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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「目―覚めたか」
「いってえ…ッ!」
「俺の話聞け」
「はい…」

ようやく落ち着いたらしく、瑞は大人しく頷いた。とりあえず、伊吹自身も落ち着こうと息を吐いた。

颯馬が何か知っているのか?

以前、呪い事件のときに、伊吹もまた瑞との関係について颯馬から言及された。あいつは何なのだ。ここまで瑞が揺さぶられているのはなぜだ。一体何を知っているのだろう。

「…もう一回行くか、沓薙山に」
「え?」

あそこに行けば、また新しいことがわかるかもしれない。逆さ地蔵に天狗に童子…瑞を監視する神様たちならば、何かを提示してくれるかもしれない。
いつか知る時、というのが、もしかして近づいているのかもしれないのなら。

伊吹の意図をくみ取ったのだろう。瑞はしばらく茫然としていたが、やがて強いまなざしを取り戻して頷いた。

「瀬戸さんの件が片付いて…落ち着いたら、行こう」
「……はい」

沈黙が落ちた。もう戻れない。それでも、もうそれでいい。戻れないなら止まるか進むかしかないのだ。だけどこいつは、止まることももう怖いのだ。だったらもう、突っ走ってしまえばいいのだ。決して投げやりになっているのではなく、それがもういま自分たちにできる最善なのだ。

「はい話はおしまいッ!帰るぞ。ラーメン奢ってやるから」

緊迫した雰囲気を壊すために、伊吹は手を叩いた。瑞は大きな声に驚いたのかびくっと身体を震わせたのち、自分の驚き具合がおかしかったのか笑い出した。