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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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昼休み。瑞は秋空の下でクラスメイトらと野球をして遊んでいた。広い校庭の上には青空が広がり、なんとも心地がいい。瑞はファーストに立ってぼんやりと空を見上げている。全然ボールが飛んでこないから、緊張感も空の奏多へ吹っ飛んでしまった。

「へいへーい」
「しっかり打てよー」
「ねー守備めっちゃ暇なんだけど」
「うるせー瑞!おめーんとこに打ってやるからなー!」
「はい三振~」
「チクショー」

バカ騒ぎを楽しんでいると、遠くから名前を呼ばれた。

「瑞くーん!」
「あ、颯馬」

食堂帰りらしい颯馬が、女子生徒二人と並んで渡り廊下のほうで手を振っている。

「野球?俺もまーぜーてー」
「いーよ。ちょうどバッター一人足んないから、バッターボックス入ってよ」
「はいよ」

よろしくーと軽い挨拶をしてゲームに入る颯馬。あっという間に他の連中の心をつかみ、打ち解けている。彼といた女子二人は、バックネットの裏でうっとりとした表情を浮かべていた。

(人徳ってやつか?)

馴れ馴れしいやつめ、と不愉快にならない愛嬌のよさ。何をしてても愛される人間というのがいるのなら、颯馬のようなやつを言うのだろう。どうしたらこんなふうに育つのだ?愛されるというのは、持って生まれた才能なのだろう。

「わっしょーい!」

颯馬は景気よくセンター前へヒットを飛ばし、軽快な足取りで瑞のいる一塁までやってきた。

「あんま跳ばなかったや」

ニコニコしながらそう言って、ベースを踏んずける颯馬。

「野球久しぶりだけどたのしーね」
「そりゃよかった」
「ねー今はなんの幽霊調査してんの?」
「してないよ、別に…」

嘘ばっかり、と颯馬が笑う。やはり食えない奴なのだ。へらへらしているけれど、鋭い洞察力を持っている。