忘れじの夕映え 探偵奇談8
「…色白で、手足が細っこくて…」
「……」
「真ん中で分けた前髪。右目の下にほくろがある。笑うと、目が糸みたいに細くなって…。ドッヂボールはへたくそだけど…キックベースはちょっと上手だった。音楽で歌ったうたを教えてあげると、すごく喜んでくれて…なんの曲だろう、リコーダーでよく、その曲を一緒に吹いたりした」
青葉は言葉を失った。記憶の中のあつしの姿と、瑞が話すその特徴が一致する。
「リコーダー…そう、教えてあげた…」
あの曲は。なんだっけ。そう、あつしが好きで教えてほしいといった曲。
瑞は、青葉が今の今まで忘れていた記憶まで知っている。なぜ?どうして?
「…俺、ふざけてないよ。でも気分悪くしてごめんな。ただ、約束、思い出してやってほしいんだ。あっくんのために。初恋のひとなんだろ?」
きびすを返して行こうとする瑞の腕を掴む。
「待って!あっくんに会ったことあるの!?」
誰も。自分以外誰も覚えていないあの男の子を、瑞だけが知っている!
「会ったことはないけど、わかるんだ。視えるから」
「…」
嘘、ではないようだ。
「ちょっと、詳しく話して…」
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作品名:忘れじの夕映え 探偵奇談8 作家名:ひなた眞白