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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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「今思えば、あれ初恋だったと思う。あたしの」

青葉がそんなことを言うから、郁はちょっとキュンとしてしまった。懐かしそうに話す彼女の目が、いつになく穏やかだったから。おおよそ恋バナとは無縁な印象だった青葉に対し、一気に親近感を覚える。

「瀬戸にもそんなかわいい時期があったんか」
「うるさいよ須丸」
「てっ」

茶々を入れた瑞の頭を、青葉はペン入れではたく。

「でもそれ、別に怖い話じゃなくね?」

村上くんに言われ、続きがあると青葉は言った。

「あっくんは、その秋の終わりにいなくなったんだ。ある日急に遊びにこなくなって、それきり会えなかった」
「町に帰っちゃったの?」
「だと思う。あたしらあっくんの家も知らなくて、なんでおばあちゃんちにいたのかも知らなくて、だから急にいなくなっちゃったけど、しょうがないかって諦めちゃったんだよね」

寂しかったと青葉は続ける。たったひと月弱のことだったらしいが、あつしと過ごした時間は本当に楽しかったと。

「それで今年の夏、久しぶりに小学校の同窓会があって」

青葉は中学にあがる前に転校したので、小学校の友だちとはずいぶんしばらくぶりだったそうだ。

「そこで懐かしい思い出話してるとき、あたしあっくんのこと思い出したんだよね。でも、誰もあっくんのこと覚えてないんだよ」

なんだそりゃ、と村上くん口をはさんだ。

「確かにあっくんと過ごしたのは、小学校生活の中のほんの一瞬だけだったけど、あんなに仲良くなったのに、忘れるなんておかしくない?でも、だーれも覚えてないの。そんなコ、知らないって」